廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
朝もやと火災の燻る煙が混じりあう
夜明けがやってきた。
悟は河岸の岩にもたれ掛かり、いつの間にか眠ってしまっていた。
焦げ臭さの他に、河岸の苔の生臭さが鼻先を過る。
視界は酷く悪いが、目の前の大きな河を幾つもの死体と思われる固まりが流れていた。
『これは三途の川か?』
地獄絵図そのままの光景だった。
『だ、誰か……た、助けてくれ!!』
声のする方を見たら、共に逃げた工員だった。
昨夜、具合が悪そうに嘔吐してからは、近くで眠りについたようだったが……
『どうしました?』
恐る恐る声のする方に近寄る。
『誰?』
『技術部にいる遠藤悟です。……あなたまさか?!』
『助けてくれ!目が見えないんだ』
昨夜、その工員が飲んでいた酒は、メタノールの割合がかなり濃い、粗悪品だった。
メタノールを飲むと、失明する危険があった。