【完】ダンデライオン
そして、マグノアは、国王を連れて城内へと戻った。
それを見たものはいなかったが、
国王の槍で貫かれた右胸。
涙に濡れた顔。
服には、オオカミが噛んで運んだであろう噛み跡。
マグノアが疑われるのは、当然のことだった。
周りのニンゲンはマグノアが言葉をしゃべれることも知らなかったし、マグノアが、弁解することはなかった。
「この恩知らずのオオカミ!」
「まさか国王を食べようとしたんじゃないだろうな!?野蛮なやつだ!」
「こんなやつ殺してしまえば良いんだ!」
「そうだそうだ!国王を殺したくせに!」
マグノアは、いつしか国民にそう言われるようになった。
しかし、エルノが「それだけは…」、と頼み込み、森へとオオカミは追放されることで集結した。
毎日決まった時間に食糧を提供する代わりに、ニンゲンは襲うな、ニンゲンに二度と近寄るな……
そう言われながら、マグノアは国を後にした。
他のオオカミがニンゲンを襲ってしまったら、マグノアを殺さないよう頼んだエルノがきっと責められる。
そう思ったマグノアは、オオカミの長に名乗り出た。
そうやってマグノアは、女王と別れ、国王と別れ、エルノと別れた。
そして、おばあちゃんと出会い、会えないエルノを見守ってきた。
『……これが、私の国王との記憶。誰との約束も守れない…情けない話だ。』
マグノアは笑っているのに、泣いているように見えた。