本音は君が寝てから


「はあ」


間の抜けた返事を返しながら、必死にその内容を考える。
……雑誌社だから色々企画を練らなきゃいけないのか?


「企画を練るための勉強ってことですか?」

「はい! そうなんです。コース料理の構成の仕方とか、ホテルレストランならではの気遣いとか、もしお時間あったらいつか聞かせていただきたいんですが。……駄目ですよね」


最後の方は弱気になったのか、彼女は徐々に顔を赤くして俯いてしまう。

最初の意気込んだ様子からのそのギャップ。

ちょっと勘弁してくれ。
無意識にやってるならかなり罪作りだ。



「……いや、別に良いけど。俺今日はちょうど早番だから、ディナーの仕込みのチェックまで終われば帰れるし……」


ホテルにはシェフがたくさんいる。
客が少ない平日なんかは交代制で休みを取ったり出勤時間をずらしたりしているのだ。

いつもならそれでも最後までいるけれど、今日は他に10年クラスのシェフがいるし。任せても問題は無い。


「でも何時とは言い切れないから、どこかで待っててくれれば……っていうか、今日でいいのかな」


途中で我に返る。
そうだよ、彼女は打診に来ただけなのに。
まるで舞い上がってるじゃないか、俺。

< 13 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop