本音は君が寝てから


「大丈夫です! いつでも。今は急ぎの仕事ないし。えっと何時にこれば良いですか?」

「そうだな。19時半、いや、20時は過ぎるかな。……この近くに『ショコラ』って喫茶店あるんだけど知ってる?」

「『ショコラ』……すみません、知りません」


しょげた様子を見せる彼女に、逆に慌てる。


「いや別に謝ることじゃない。地図を書くよ。俺の知り合いが経営してる喫茶店だから、俺の名前言ってくれればのんびり待ってられる。甘いものは好きかな? 旨いケーキを作るヤツだから、何でも好きなもの注文して待ってて。おごるから」

「いえいえ、そんなのだめです。こちらからお願いしてるんですから。お店も名前が分かれば自分で調べられますので。あの、それで、もし宜しかったら連絡先も交換していただけますか?」


おずおずと携帯電話を取り出す彼女。
振って沸いたチャンスに俺もポケットを探るけど、厨房に置きっぱなしにしたまんまだった。


「あ、悪い。今携帯もってないんだ」

「あ、じゃあ私の連絡先だけお渡ししておきます」


彼女は手帳を取り出して、すっとペンを走らせるとそのメモを破って俺に渡した。

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