本音は君が寝てから
「……お疲れのところありがとうございました」
「え? あの」
「立ち話で少しお話聞けましたし。もし良かったらまた今度時間のある時に連絡ください。私はいつでも大丈夫ですので」
「あ、……うん」
「ゆっくり休んでください。今日は帰ります」
ちょっと待ってくれ。
せっかく会えたのにこれで終わりなんて。
何がいけなかった。
飲みが嫌なのか?
そうかも。
二人きりで会うのは初めてなんだから、もっと健全な場所から攻めなきゃ駄目だったのか?
「ちょ、森宮さん」
「私の番号、ご存知ですよね」
「あ、うん」
「待ってます」
寂しそうに微笑まれて、俺は続ける言葉を失くす。
そのまま駅の方へ消えてく彼女を見送って、……見えなくなってから気づいた。
「……ああ、送るよって言えば良いのか」
思い立って一歩踏み出した時、電車がゆっくりと駅に入ってくる。
このタイミングの悪さに泣けてきそうだ。
躊躇しているうちに動き出した電車を見送って、俺はため息を一つ吐き出す。
駄目だ。
どうして俺はこんなにへたれた男なんだ。