本音は君が寝てから
「えっと、どこがいいかな」
「どこでも良いです。歩きながらお話聞いてもいいですか?」
「え? ああ」
「じゃあ、ホテルならではのイベントとかあります?」
「ああ、ウチのホテルだとランチバイキングをするんだけど……」
彼女の言葉に導かれて、俺は言葉を紡ぎだす。
話の主導権を持ってもらえるのは楽だ。
内容が仕事のことだというのも助かる。
それなら考えなくても次々言葉が出てくるからだ。
「じゃあ、料理の構成についてですけど……」
彼女の声は耳に心地良くて、ずっと聞いていたくなる。
「……で、どうしましょうか」
「え?」
気がつくと、もう駅前まで戻っていた。
「ああ、そうだね。どこにしようかな」
裏口に入ると飲み屋街はあるけど、どちらかといえば居酒屋系でざわざわしている。
お洒落なとこっていうとホテルラウンジとかになるけど、職場なだけに行きづらい。
でもわざわざ電車に乗って場所を変えるというのもなんだし……。
俺が迷っている間、彼女はじっとこっちを見ていた。
見られていると思うと余計焦ってしまって頭が回らない。
やばい、時間ばかりが経ちすぎてる。
すると不意に彼女はぺこりと頭を下げた。