本音は君が寝てから
「無理なんかしてない」
「してます」
引き波のように、何を言っても彼女が遠ざかる感じがする。
何度も体験しているパターンだ。
俺の好意が届く前に、相手の方から引いていく。
逃げていかれても……いつも俺は追いかけない。
どうしてだったんだろう。
分からない。
忙しさを言い訳にしていたといえばしていたし、深追いをして、傷つくのが怖かったとも言える。
「……森宮さん」
彼女も、俺の前から消えていくのか?
するりと抜け出して、相本のところに行く?
くそ生意気な後輩の顔が浮かぶ。
冗談じゃない、あいつには渡したくない。
消えるな。ここにいろ。俺の傍に。
俺のことを、好きになってくれ。
今だ俯いている彼女の手に手を伸ばす。
指先が触れると、彼女は驚いたように手を引っ込めた。
「え? 香坂さん?」
「いいから行こう。俺は君と話がしたい」
珍しく強引な一言が口から出た。
やるじゃないか、俺。ヘタレ返上できるか?