本音は君が寝てから

「君、じゃなくて」

「え?」

「……もう一回名前呼んでください」


背中から聞こえる甘い声。

ちょ、待て。反則だ。
なんだその心臓貫く感じの甘え方は。


「あ、綺夏」


俺の声は動揺で震えていて、自分で聞いてもなんとも情けない。


「はい」

「綺夏」

「はぁい」


甘ったるい返事に、変な汗が出る。

今日は大人しく送っていこうって思っているのに、頼むから煽るのは止めてくれ。

ぎゅっと彼女が腕に力をこめるたびに、背中にあたるふくらみ。
俺だって、男だからこういうのに簡単に欲情するんだよ。
コイツホントにわかっているのか?


「ちゃんと教えないと狼になるぞ」

「……それもいいですぅ」


酔っ払いのたわごとを、真に受けていいのだろうか。
でも綺夏だって大人だ。分かって言っているはず。

ええいままよ。
もう襲っちまえ。


「じゃあ、俺んちに行くぞ!」

「……ん。すう」


意を決して吐き出した言葉は、こんなに密接した距離に居る彼女にさえ届かないらしい。
背中の彼女は、俺の背中にしがみ付いたまま、幸せそうな寝息を立てていた。

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