本音は君が寝てから


 その後、頻繁に彼女を見かけることになった。

週に一度くらいの割合で喫茶でよく取材をしているのだ。
それに相手も広報担当者ではなく、いかにも一般人風な相貌の人間であることが多い。

どうもホテルの取材ではなく、他の打ち合わせもこの喫茶でしてくれているようだ。


 何かここの喫茶が気に入る要因があったかな。

喫茶メニューを目で追いながらそんなことを考える。


 俺もそれ程厨房の外に出ているわけでは無いはずなのに、なぜだか彼女の事はよく見つけてしまう。

そして、見つけてしまったら気になって落ち着かない。

落ち着かないんじゃ仕事にならないじゃないか。

そんな言い訳を胸に、時間に余裕がある場合は休憩がてら喫茶にコーヒーを飲みに行く。

敢えて彼女からは姿が見えなさそうな、だけど彼女の声は聞こえそうな席を選んで。

よく通る声をBGMにして一息つくのは良いもんだと初めて知った。




「あ、こんにちは」

 彼女は俺を見かけると、いつも立ち止まってきちんと礼をする。歩きながらじゃなく、必ず立ち止まって、だ。

だから俺も必ず止まって笑みを返す。話すことは一言二言。それでも、その瞬間の彼女との空気感がとても心地いい。


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