幻影都市の亡霊
「で、また退けられたと?」
「今度はエキストの娘が邪魔したわ。何よ、町を送るのには協力したくせに」

 ラクスは白いものを見つめ、

「今はエキストの集落にいるのか?」
「そろそろこっちへ来るんじゃないかしら。貴方と私の利害が一致したから協力しているの。だけど、あの男が近くにいるのは、とても嫌だわ。死んでくれたらいいのに」
「死んだらお前も消えるだろうが」

 白い亡霊が憎々しげに吐き捨てると、その口元から白い霧が漏れていた。ラクスが皮肉ったように言う。

「エキストは新しい王を守っているのか……。その小僧の町をここに送っておいて」
「理由はわからない。だけど、あのセレコス、食えない男よ」

 と、そこで二人は下を見た。ラム達もそちらを見ると、黒い影が音も立てずにざわめいているのがわかった。それに気づいた瞬間、ぞっと悪寒が走った。

「……悪魔のような人達……」

 ラムが恐れたように兄にしがみつく。コロテスも心底驚いたそうにそれを見ていた。

「今ごろ来たようだ」

 そこに嬉しそうなラクスの声が聞こえた。

「これから、あいつらはこっちに来る。あの町を元に戻すために。エキストの集落にいれば手出しするのも難しいが、こちらに来てしまえばこちらのものだ」

 白い亡霊も美しいその顔に冷酷な笑みを浮かべた。

「やあぁっと仲間ができた。こいつらにヨミのことを任せて、私はウェインを心置きなくぶち殺してやるわ。憎たらしいヨミの大切な王、ウェイン=ストロールをね」

 その名前に、二人は大きく驚愕した。

「ストロー……ル?」

 今、女は新しい王の器を持つ者の名はウェイン=ストロールだと言った。
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