幻影都市の亡霊
「……お父様、お母様は……」
「死んだ……」

　意味のわからないラムと、死という意味はわかるのだが、それが自分の母に訪れたのだと理解できないコロテスは、嗚咽を飲み込みながら強く自分達を抱きしめる父親を、ただどうすればいいのかわからず、その小さな手で、父親に抱きついたのだった。





　大きな青い星がきらきらと輝く。ラムは空を眺めていた。すると、空に白いものを見つけてそっと眺めた。

「……ヨミ様……？」

　それから確かにヨミの気配を感じて、驚いたラムは、身を乗り出してそれを凝視した。美しい白い女だった。

「え……？」

　その女は隣の棟へと近づいていくのだ。

「……？」

　ラムはそっとそちらを窺った。白い亡霊は窓のふちに立つと、その部屋の中にいる人物を待った。そしてそれは、ラクスの部屋だった。

「…………」

　紫の瞳を真ん丸に見開き、それを不思議そうに見つめていた。そこに、コロテスがやってきて、

「こら、まだ寝て……」
「しっ……お兄様、あれ」

　ラムが指差す方を見れば、そこで白い亡霊とラクスが会話していた。

「何を話しているんでしょう……。あの白い方、ヨミ様の気配を持っているのです」
「……」

　コロテスは数瞬考えると、ばっと右手を振った。すると二人の近くで会話されているかのように、二人の声が鮮明に伝わってきた。器の小さいラクスがそれに気づく様子はなかった。
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