幻影都市の亡霊
 亡霊魔が一歩後退った瞬間、セレコスは地獄の番人のような笑顔をして、

「なら死ね」

 どづっ……ぱぁんっ

 一睨みで、それは弾け消えた。ぞわり、と黒い者達がどよめいた。セレコスがそれらを見回し、

「俺はな、ゼロアスを侮辱する奴が大嫌いだ。そして、あいつがオークを殺したって言う奴はもっと嫌いだ。あいつ自身がそう思ってた。だから、そんなあいつは嫌いだ。だが、それを思い直させてくれた人がいる。その人の息子をなぁ……」

 どんっどんっどっどづっばぎんっじゅばっ……っ!

 地面から次々に黒い触手がはえ、次々亡霊魔を貫いてゆく。逃げ出そうと跳躍したものも、触手が伸びて捕まえ、貫く。簡単に反応できる速度ではなかった。ただ一人セレコスは、腕を組んでその阿鼻叫喚図を眺めていた。

「殺そうとするなんてもってのほか、なんだよ」

 セレコスはそれに背を向けて、歩き出した。町の中へ。気泡も、それを避けるように迎え入れた。


















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