幻影都市の亡霊
「その涙は、何の涙だ?」
「聞くか? 普通……」

 ヨミが実体の無い手でわしわしと頭をなでる。

「一緒に行動しても、良いよな?」
「好きに、しろよ」

 ウェインは吐き捨てた。ヨミはにこっと笑い、

「さっきの答えが保留になってる。で、一緒に来てくれるのか?幻界に」
「…………」

 ウェインは答えなかった。答えるためには、時間が少なすぎた。

「……すぐにじゃ、駄目か?」
「いや、そうでもない。迷ってるんなら、もう少し考えてみれば良い。ただ、時間制限があるぞ。あんまり長い時間、幻界に置いておいたら、身体が消えちまうし」

 ウェインが、眉をひそめ、

「……リミットは?」
「そうだな、一ヶ月以内、一ヶ月超えたら、さすがにきついと思う」

 するとウェインは意を決して頷いた。ずるずる考えても仕方がなかったからだ。

「俺、命狙われてるんだよな? 守れよ、お前」
「わかってる」
「俺はお前と幻界に行く」

 ヨミは嬉しそうに笑った。本当に嬉しそうな、晴れやかな笑みだった。















< 24 / 168 >

この作品をシェア

pagetop