幻影都市の亡霊






 彼らは、ファイバを東に進んでいた。目的は、極東の大陸、フォゲティアだった。

「あの話、本当なのか……?」

 ウェインが疑念を浮かべた顔でヨミを見た。ヨミは頷く。

「ああ。フォゲティアは幻界と現界の両方に在るんだ。だから、どっちからもフォゲティアには全くまともに行けないだろ?まー、向こうではレーテス・フォゲットって呼ばれてるけど」

 二人と一匹は今、港に向かっている。ウェビトスへ向かう船に乗るためだ。人で溢れる道を歩いている。ヨミは実体が無い。だが、姿は見えるらしい。本当はウェインだけに見えるように姿を消すこともできるらしいが、そうすると、ウェインがたちまち変質者なので、今のこの状況らしい。

「レーテス・フォゲット――忘れられた大陸……? と、いうことは、向こうでも同じ状況なのか……?」
「ああ。特別な行き方をしなきゃ行けないぞ」

 ヨミがこともなげに言う。

「特別な行き方をすれば、行けるのか?」

 ヨミが頷く。

「多分、こっちも同じ原理だろうな」
「ふぅん……」

 やり方を聞いても、理解できなさそうなので、ウェインは聞かないことにした。
 そこで、港が見えてきた。ウェインは迷わずそこに進む。

「おっと、んじゃ俺、小さくなるか」

 そう言うと、ヨミが消えた。

「え?」

 ウェインが横を見る。と、

「よっ」
「うわっ」
「しっ、今の俺は見えないから」

 ウェインの肩の上に、掌ほどの大きさのヨミがいた。ちゃっかりあぐらをかいている。

「さ、これで一人分の金でいいだろ?」
「……」

 ウェインはまだ、驚きから立ち直ってはいなかったが、そのまま乗り場に歩いた。

 白銀の煌きが眼に届く。白銀の金属の壁で、その一帯はできていた。何故、建物が光り輝くこの素材なのかというと、海から見たときに、そのままそれが目印になるからだということだ。この金属は良く光を吸収し、夜には発光する。

 ウェインはそのまま乗り場に入った。
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