幻影都市の亡霊
 ウェインは、驚いてセレコスの言うことを聞いていた。流れでついてきたんだと、取引でついてきたんだと思っていた。だが、本当にそれだけだったのだろうか。少しも信じていない相手と取引なんかするだろうか。自分は、少しはヨミを頼っていたのだろうか。

「……俺に全てを伝えろというのか?」
「ああ。全てだ。お前が生まれたわけから、こいつの母親と父親に起こったことまでな」

 ヨミはしばらく黙り込んだ。ちろちろと炎が揺れる。

「……俺は、人間だったんだ」

 ウェインは驚いて、話し始めた黒い亡霊を見た。

「そして、俺はあの人に置いて逝かれてしまった」

 そして、その話は始まった。















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