幻影都市の亡霊
ぱちぱちと燃え木が音を立てる。それ以外に音は感じられない。妙な静けさが辺りを包んでいた。
「それで、オーキッドという人の妹と、俺の父親は結婚したんだな?話を聞く限り、愛し合っていたんだろう?どうして俺の父親は、母さんと出会って、愛し合った?」
ウェインは釈然としない思いを感じて、ヨミを見ていた。今の話を聞けば、父親はユークラフという人を捨てて自分の母親と愛し合ったということになる。自分の父親は、親友の妹を裏切った男ということになる。ふつふつと言いようのない怒りが込み上げてきた。そんな節操なしの父親だということに、ウェインは嫌悪さえ抱いた。しかしヨミは首を横に振った。
「それは、仕方のないことだったんだ」
「だから何故?」
ヨミは炎を眺めていた。
「……ユークラフ様は結婚して、一人息子が生まれてもまだ、ウィンレオと呼ぶ決心がつかなかったんだ。それは、ユークラフ様のウィンレオに対する遠慮だった。いつも、ウィンレオとの間に隙間を作っていたんだ。だから――」
ぎぇーと、だみ声の鳴き声が飛び去っていった。
「オーキッドが死んだとき、ウィンレオは、彼女の負担にならないために、ウィンレオでありたいがために、王である自分から逃げたいがために、現界に逃げ込んだんだよ」
ウェインははっと目を見開いた。