幻影都市の亡霊
「……君は私が嫌いか?」
ウィンレオは真直ぐにその水色の瞳を見つめた。途端、ユークラフの顔は真っ赤になったが、眼は決してそらさなかった。
「断じて。わたくしは――好いております」
躊躇いながらも口にした強い言葉だった。ウィンレオはふっと微笑んだ。
「お前の兄さんがな、妹をもらってくれと言っていた」
「なっ……そんなっ」
それこそもともと真っ赤だった顔がさらに赤くなり、目を回す勢いだった。
「クロリス様、真に受けないでくださいませ!わたくしではとても……」
「俺の妻になってくれないか?ユークラフ=ファザール=イプシロン。確かに私には一人目の妻がいる。君は事実上二番目、になってしまう。だが、君といるとき私は余計なことを考えずに済む。いや、君が嫌なら良いんだ。忘れてもらって構わない」
ウィンレオは言い残して去ろうとした。すると、
「お受けします」
ウィンレオは振り返った。立ち上がって、凛とした風にウィンレオを見返す彼女には、力があった。ウィンレオは目を見張った。ユークラフは嬉しそうに微笑んで、
「わたくしなどでよければ、クロリス=ウィンレオ=エンドストロール様」
〝わたくしを側にいさせてください〟
そんな彼女の儚い身体をウィンレオはそっと抱きしめた。ユークラフも抱き返した。
ただしこれは、まだ彼らの愛の始まりですらなかった。お互い好意を持つ者同士だったが。正式に結婚し、数ヶ月経った。だがユークラフは未だに一線を超える勇気を持てず、ウィンレオはそんな彼女を待っている状況だった。
「彼女は本当に俺を好きなのはわかっているんだ。だが、まだ俺に心を許していないみたいなんだ」
「じっくり待ってやってくれ。きっとユークラフも頑張っている」
「そーだ、ウィンレオ。悩むことはない。彼女、ソフラス様とも上手くやってるじゃないか」
ヨミが言った。ユークラフは確かにしたたかな女でもあった。もうこの頃には、ヨミは完全にウィンレオと呼んでいた。にやっと笑う顔も板についてきている。
ま、こんなことを板につけさせるウィンレオもウィンレオである。
「気長に待つとするよ」
ウィンレオはそれでいて嬉しそうな顔で、自分の妻のいる場所へと帰っていった。それをオーキッドは嬉しそうに、
「あいつらは、あれはあれで上手くやっていくだろうな」
だがそれは――茨の道であった。
ウィンレオは真直ぐにその水色の瞳を見つめた。途端、ユークラフの顔は真っ赤になったが、眼は決してそらさなかった。
「断じて。わたくしは――好いております」
躊躇いながらも口にした強い言葉だった。ウィンレオはふっと微笑んだ。
「お前の兄さんがな、妹をもらってくれと言っていた」
「なっ……そんなっ」
それこそもともと真っ赤だった顔がさらに赤くなり、目を回す勢いだった。
「クロリス様、真に受けないでくださいませ!わたくしではとても……」
「俺の妻になってくれないか?ユークラフ=ファザール=イプシロン。確かに私には一人目の妻がいる。君は事実上二番目、になってしまう。だが、君といるとき私は余計なことを考えずに済む。いや、君が嫌なら良いんだ。忘れてもらって構わない」
ウィンレオは言い残して去ろうとした。すると、
「お受けします」
ウィンレオは振り返った。立ち上がって、凛とした風にウィンレオを見返す彼女には、力があった。ウィンレオは目を見張った。ユークラフは嬉しそうに微笑んで、
「わたくしなどでよければ、クロリス=ウィンレオ=エンドストロール様」
〝わたくしを側にいさせてください〟
そんな彼女の儚い身体をウィンレオはそっと抱きしめた。ユークラフも抱き返した。
ただしこれは、まだ彼らの愛の始まりですらなかった。お互い好意を持つ者同士だったが。正式に結婚し、数ヶ月経った。だがユークラフは未だに一線を超える勇気を持てず、ウィンレオはそんな彼女を待っている状況だった。
「彼女は本当に俺を好きなのはわかっているんだ。だが、まだ俺に心を許していないみたいなんだ」
「じっくり待ってやってくれ。きっとユークラフも頑張っている」
「そーだ、ウィンレオ。悩むことはない。彼女、ソフラス様とも上手くやってるじゃないか」
ヨミが言った。ユークラフは確かにしたたかな女でもあった。もうこの頃には、ヨミは完全にウィンレオと呼んでいた。にやっと笑う顔も板についてきている。
ま、こんなことを板につけさせるウィンレオもウィンレオである。
「気長に待つとするよ」
ウィンレオはそれでいて嬉しそうな顔で、自分の妻のいる場所へと帰っていった。それをオーキッドは嬉しそうに、
「あいつらは、あれはあれで上手くやっていくだろうな」
だがそれは――茨の道であった。