散華の麗人
それを聞いて、一正は安堵の溜息をつく。
「なんや。最初から言えよな。余計な疑いを持たせおって。」
「すみません。」
リアンは頭を下げた。
「それで、上尾を攻めるんか?」
「その予定でしたが、貴方が奇術師を家臣にしたので、出来なくなりました。」
「あ。」
一正は自分が間抜けなことを言ったと自覚して苦笑した。
「まぁ、今はわしの国の支配下におるからええやろ。」
「しかし、上尾の権力が戻り、復興すれば、裏切り、戦を仕掛けるかも知れません。」
「そんときはそんとき!今は成田を攻め落とすことのみや。」
リアンに一正は笑った。
「成田からここまで100里近くある。その間の食糧を農民から買い占める。」
「何故です?民は豊かな国に生えている雑草に過ぎません。その雑草を肥やして何になるのですか。」
(こいつ!!)
民から食糧を買い占めるのではなく、あくまでも奪うという姿勢のリアンを風麗は嫌悪した。
「――っと、失礼。」
睨む風麗にリアンは笑った。
「リアン。国を作るのがわしで、民は国の形や。食糧を奪えば飢餓が起こり、民が苦しむ。」
「それも我等が勝つ為にあります。誰も、陛下に後ろ指を指しはしない。」
「民が苦しまない道があるにも関わらず、自分の利益だけしか見ない奴は国王やない。」
リアンに一正ははっきり言った。
「国家は民があって成り立つ。だから、民を第一に考えなければならない。」
「崇高なお考えですね。しかし、それは甘い。農民は力を持てば、貴方に歯向かいますよ。」
一正にリアンは厳しく忠告した。
「そうなったなら、それはわしの力不足や。そんときは、わしを守ってくれる奴がいる。幸運なことにな。」
一正はそう言って、風麗を見た。
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