散華の麗人
朝日が差込み、眩しさに風麗は目をこすった。
「お目覚めか?」
低い声と同時に回転する視界。
ぐわんぐわんと回り、ごんと壁にぶつかる。
「――っ!!」
恨めしげに相手を睨むとそこには雅之が居る。
「どうも、おはよう。」
嫌味ったらしい言い方をしながら笑う。
どうやら、いつの間にか眠っていたようだ。
「ぐぅぐぅと良く寝るものだ。貴様、それでも傭兵か。」
普段よりも刺々しいのは余程機嫌が悪いのだろう。
「八つ当たりをする大人にだけは言われたくない。」
「口が減らぬ女だ。」
雅之はそう言うと、襖の方を見た。
一正が居る方だ。
「……様子は?」
「相変わらずの民煩悩だ。」
雅之はふんと鼻を鳴らす。
「あれは不治の病だ。故に、侍女にでも任せるに限る。」
呆れたように言う。
「先程、報せが来た。来い。」
その場から去ると、2人は庭へ出た。
「八倉家当主が来るようだ。戸尾のことや、先日起こった暴動についての報告だろう。城には柚木が救援を出している。故に、心配はいらないだろう。」
「その当主って」
風麗の言葉を遮って、馬の足音が聞こえる。
「……?」
2人は顔を見合わせる。
この場に馬が走るような場所はない。
馬小屋があるわけでもない。
「うわぁああああ」
少年の悲鳴が聞こえる。
「やばい!まずいって!!!だから、あそこで速度上げたら駄目だと言っただろ!」
「黙れ。舌を噛むぞ。」
「待て、おちるぅううううう!!!!!!」
なにやら騒がしい。
「裏山に続く裏道の方だな。」
「何だろう。」
雅之と風麗は走る。
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