なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 のんびりと考えながら歩いてた。

 何気なく見た反対側の車線に停まったタクシーを見て、目を疑った。

 寿命が10年くらい縮んだと思う。

 反対側の道路に停まったタクシーからは、萩原さんが降りてきた。

 野々宮さんと一緒に。

 横顔しか見えなかったけど、タクシーから降りた野々宮さんは、萩原さんの腕に自分の腕を滑り込ませ、べったりくっついていた。

 そのまま二人で歩いて行った先は、ヨーロッパからの客に人気で、格式高く敷居の高いと言われている有名なホテル。

 心臓はばくばくして、足はその場から動かなくて、呼吸も苦しくて、目で追うことしかできない。

 二人の姿が見えなくなるまでその場から動けなかった。

 歩いている人込みの中に佇み、後ろからぶつかられた勢いで足が動き出し、何も考えられないまま人込みに紛れた。

 あんだけ精神論について考えていたのに、その場に直面すると、そんなもんなんの役にもたたなかった。

 気づけば走っていて、たどり着いたら所は最初に出会ったバー。


「いらっ...し...なっちゃん?」

 あいさつもせずに一番端のカウンターに座る。

「どうした?」

「......」

「萩原か?」

 頷くことしかできなかった。

 何か話さなきゃって思うんだけど、口を開くのは重い。

 まずは落ち着いてからと、お酒を出すところなのに出てきた飲み物はホットチョコレート。

 両手でカップを持ち、熱いホットチョコレートをお腹に流す。

 熱いものがお腹に落ちていくのと同時に、ゆっくりだけど考える力が戻ってきた。


 


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