なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】


「おいしいわよ、ここのコーヒー。飲んでみて」

「......」

「萩原もここのコーヒー好きでしょ? この前初めて連れてきてもらったときからここが好きになってね...」


 そうなんだ。ここには来たこともないし、コーヒーなんて外で飲んだこともない。

 そんなことまで知ってるんだ。なんなんだろうこの人。


「まあ、いいわ。あなたもご存じのとおり、萩原は今海外で仕事を立ち上げようとして頑張っているでしょ。あの人は成功する。それだけの能力と財力、それに運があるの。ただひとつだけ足りないものがある。でもそれは私が持っている。そして助ける力だってあるわ」

 嫌な予感がする。

「あなたがいるとね、彼は自分にブレーキをかけるのよ」

「なんでそんなこと...」

「元々、恋愛事が上手くできない人だったから、やり方がわからないだけなのかも。彼の成功を望むのなら...」


 コーヒーカップを左右に避けて、体を前に乗り出してくる。

 野心を剥き出しにしているオーラ、今までにいくつもの修羅場を乗り越えてきたという自信、人を蹴落としてまで手に入れてきた成功に対するプライドと執着、そして、絶対に私を落とせるという確固たるもの。




「私に彼を返して」




 返して?

 返してってどういう......



「私は彼がまだ小さい頃から知ってる。彼は私のことが好きだった。そんな気持ちを伝えられて知っていたけれど、私は違う男と一緒になってしまった」

「じゃあ、今もその...」

「萩原は今また私に揺れ始めている。プライベートでもビジネスでも。昨晩、一晩中一緒にいてそれを確信したわ。でもあなたのことが好きなのも確かよ」

「そんな」

 確信したってどういうことなんだろう。一晩中一緒にいたって、もしかして...


「私は萩原が好き」

「......」




「だから、彼の幸せを思うなら、手を引きなさい。そして、私に返しなさい。

 彼を不幸にしたい? 夢を諦めさせたい? もう少しで手に掴めるところまで来ているのに」




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