なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
何も言えなかった。
もちろん萩原さんには自分の想い描くようなライフスタイルを送ってほしいと思う。
「そうそう、萩原を恨まないで。いくら酔ってたとはいえ、誘ったのは私のほうだから。彼は何も悪くないわ。恨むなら私を恨んで」
その一言で目の前が真っ暗になった。
そのあと何かを話していたけれど、言葉は耳に入ってきてもよく覚えていなかった。
私を残して席を立った野々宮さんの顔は勝ち誇った顔で、自分自身を信頼していて、余裕たっぷりで、じゃなきゃそんなこと言えない。
私のことをなんとも思ってないからそんなことが言えるんだ。
味方にしたら心強いけど、敵に回したら怖いタイプ。
私の横を通り過ぎるときにふわりと鼻に届いた香りはあのアトマイザーの香りと一緒で、
私もここで、萩原さんが野々宮さんと会っていたことを確信した。
携帯のバイブが膝に置いたバッグから伝わり、そこに目を落とし、何も考えずに開いた。
『昨日悪かった。今家に帰ったけど、おまえどこにいる?』
あんなに待ち望んでいた人からのメールなのに、今は嬉しくない。
野々宮さんからじゃなくて、萩原さんから聞きたかったことがたくさんありすぎて。
『俺も会いたい』
涙が頬をつたって顎先から落ちた。
会いたくない。そう思ったから。