なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
兎に角、どういう理由であれ野々宮さんには権力がある。
あのときの電話の内容は、私にちゃんと考えろっていう忠告だったんだ。最後にそう言われた気がするし。
やっぱり私は自分のことばっか。
「あなたが私と一緒になれば、もっともっと大きい仕事ができて、世界を渡り歩くようなことだって可能よ。メリットは十分すぎると思うけど?」
「野々宮、無理だよ」
「あら、そんなこと言っていいの? あの子のスタジオ無くなるわよ」
「それだけはやめろ。それにお前のものじゃないだろう」
「あなたの出方次第」
大きくため息をついた萩原さんはしばらく黙っていて、鼻歌が聞こえるのは野々宮さんが意図的にそうしているんだろう。
「俺、この仕事なくなっても別に......」
「なつ、勘違いしないでよ。あんたから仕事取ったら何が残るの? できることある? ないわよね」
「だからなんでそうなるんだよ」
なんてひどいことを言うんだろう。
何その言い方! そんな言い方ってない。
それに、萩原さんは仕事以外でも尊敬できるところたくさんある! 例えば、すごく優しいところとか、ぶっきらぼうだけど繊細なところとか、たくさんあるから。
「いい? 相談じゃないの。あなたがあの子と別れて私と一緒になる。そうしたらこの会社はもっと大きくなるし成長できる。あんたは自分のキャリアを磨けて、知り得ないことだってたくさん経験できる。スタジオだって安泰。もし断れば...」
「スタジオの従業員の仕事がなくなり、みんなに迷惑をかけて会社の信用もがた落ちになる。悪い噂は回るのが早いってことか」
「そういうこと。それをコントロールもできる」
「できないだろうがそれは」
怖い。
この人は本当にそれをすると思う。そして、完全に潰したあとは高みの見物で、崩れ去る会社を眺めているんだろう。
自分のちょっとした感情を自分のものにするためには他人のことはなーんにも考えないんだ。