狡猾な王子様
「でも、あんまり無理しないようにね?女の子って、無理なダイエットで体調崩す子が結構いるし。ね?」


綺麗な笑みを向けられて、無言のままコクコクと頷いてしまう。


この笑顔に、私はとても弱い。


だけど……。


「あ、このトマト、すっごくツヤがある!」


顔をクシャッと崩した無邪気な笑顔には、もっと弱いのだ。


うぅ……。やっぱり好き……。


声に出てしまいそうな程に大きな気持ちを、少しだけ冷めてしまったミルクティーと一緒に一気に飲み込む。


そんな私を余所に、英二さんはすっかり次の仕入れのことを考えていたみたい。


「ねぇ、冬実ちゃん。突然で申し訳ないんだけど、もし可能なら明日もまたトマトの配達をお願いできる?」


彼は突然、そんなことを切り出した。


「えっ?あ、えっと……。ちょっと待ってくださいね」


慌てて気を引き締め、お父さんに電話を掛けて英二さんに頼まれた量を配達できるか確認したあと、「大丈夫みたいです」と笑顔で頷いた──。

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