狡猾な王子様
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「なにニヤニヤしてんだ、ふう」
「え?」
「お前、めちゃくちゃ気持ち悪い顔だぞ。通行人にドン引きされるから、その顔で歩くな」
すっかり日課になった夕食後のウォーキング中、昼間のことを思い出して喜びに浸っていた私に飛んで来たのは、容赦のない暴言。
「ひっ、酷いよ、秋ちゃん!」
きっと、本当にニヤニヤと気持ち悪い顔をしていたのだろうけど、咄嗟に言い返す。
「いや、だから酷いのはお前の顔──」
「本当、秋って最低!」
呆れたような秋ちゃんの向こう側から、凛とした声音が飛んで来た。
「はぁ?俺のどこが……」
「全部よ、全部!女の子の顔を『気持ち悪い』とか『酷い』って言うなんて、もはや最低でしかないわよ!あんたの脳みそって、一体どんな構造なの?本当にデリカシーがないんだから!」
南ちゃんは“ぷんぷん”という表現がよく似合うような可愛らしい表情で、秋ちゃんを見上げるようにしてキッと睨んだ。