狡猾な王子様
「ふうちゃんって、本当にいい子!もう大好き!」


南ちゃんとしては抱き締めたいのだろうけど、彼女よりも私の方が十センチ近くも身長が高い上に体格もしっかりしているとなれば、どうしても抱き着かれるような形になってしまう。


電灯の少ない夜道では、遠目には子どもが親に抱き着いているように見えるかもしれない。


そんなことを考えて苦笑いを零し、ようやく私から離れた南ちゃんに笑みを向けた。


「明日は久しぶりのデートなんでしょ?それなのにここで喧嘩になっちゃったら、せっかくのデートが台なしだもん。庇ってくれるのは嬉しいけど、私のせいでそうなるのは嫌だし……」


すると、彼女は微笑を零したあとで、後ろから歩いて来る秋ちゃんを一瞥した。


「ありがとう。でも、全然大丈夫だよ。こんなの、いつものことだもん」


余裕の表情で悪戯っぽくフフッと笑った南ちゃんを見て、秋ちゃんがずっと前に話していたことはやっぱり本当なのかもしれない、なんて思う。

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