狡猾な王子様
「こっちのは全部、家に持って帰るんだよね?」


「そうだ。今日の夕飯は、葱だらけになりそうだな」


トマトと葱を収穫したあとに訊くと、お父さんは売り物にはならない葱を見ながら苦笑を零した。


「ねぇ、これ少し持って行ってもいい?」


「いいけど、どこに?」


「えっと、木漏れ日亭に」


「店じゃ使えないんじゃないか?」


「それはわからないけど……。私、いつも紅茶をご馳走になってるの。だから、お礼にと思って」


「そうか。じゃあ、新聞紙にでも包んで持って行きなさい」


「ありがとう」


二束程の葱を手に取ると、お父さんが首を傾げた。


「なんだ、それだけでいいのか?」


見た目が悪いだけだから普通に食べられるけど、いくら飲食店でもたくさん持って行くと困るかもしれない。


そんな気持ちから笑顔で頷いたけど、お父さんは不服そうにもう二束取った。


「どうせなら、これくらいは持って行け」


結局、片手いっぱいの葱を持って、木漏れ日亭に向かった。

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