狡猾な王子様
外から車のエンジン音が聞こえて来ると、英二さんが小さなため息を漏らした。


「ごめんね、冬実ちゃん。お待たせした上に、変なところを見せちゃって」


「いえ……」


咄嗟に笑顔を繕ったけど、気まずさを感じてしまっていたのはごく自然のことだろう。


深刻な状況だと気付いた時点で、席を外せばよかった。


遠くなっていく車のエンジン音を聞きながら後悔し、それでも気まずさを払拭するように笑顔を向ける。


「これ、今日の注文分のトマトです」


「ありがとう」


「それから、こっちはおすそ分けです」


「え?」


「うちで採れた物なんですけど、いつも紅茶をご馳走になってるお礼です。見た目はあまりよくないんですけど、香りと味は保証します」


「いいの?」


「はい」


「じゃあ、遠慮なく。早速、明日のランチで使わせて貰うよ。ありがとう」


フワリと微笑んだ英二さんを見て、迷惑ではなかったみたいだと安堵の笑みが零れ、同時に気まずさも消えた。

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