狡猾な王子様
「紅茶淹れるから座って」


「あ、はい。ありがとうございます」


向けられた笑顔に頷いて、いつものようにカウンター席に腰掛ける。


紅茶を淹れる為のお湯を用意し始めた英二さんは、買ったばかりだという新しい茶葉の缶を見せてくれたけど……。


私の心は、今さっきまでこの場所にいた女性へ向いてしまっている。


みちるさんというあの女性は、英二さんとどういう関係なのだろう。


親しいようで、どこか距離がある。


そんな雰囲気を醸し出していたふたりだけど、みちるさんが泣いていたことも気になる。


姉や妹にしては余所余所しい感じだったし、だからと言ってまったくの他人というわけではないだろう。


それに……。


実家が茶道の家元だと思わせる、英二さんの言葉。


もともと自分のことはあまり話さないところはあったけど、もしかして彼は立派な家柄の人なのかもしれない。


そんなことを考える頭の中では、英二さんへの疑問ばかりが次々と浮かんでいた。

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