狡猾な王子様
あっという間に頭の中がいっぱいになってしまった疑問たちには、もちろん触れられるはずもなくて……。


なんとか気にしないように笑顔を繕って、英二さんと他愛のない話をしていた。


「……なにも訊かないんだね」


一瞬の沈黙のあとでそんな言葉が落とされたのは、紅茶を飲み始めてから数分後のこと。


その意味はすぐに理解できたけど、返答に困る。


そんな私に、微苦笑が向けられた。


「俺に訊きたいこと、あるんじゃないの?」


英二さんがそんなことを言う理由はわからないけど、彼が意地悪だというのは明白で。


訊きたくても訊けるはずもなく、ようやく気まずさが消えたことにホッとしていたのに。


私を困らせる英二さんから、視線を泳がせることしか出来ない。


「無理して気にしない振りをするくらいなら、別に訊いてくれてもいいんだよ?」


綺麗な笑顔を見せる彼は、一体私にどうしろというのだろう。


例え、私が質問をしていたとしても、適当にはぐらかすくせに……。

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