狡猾な王子様
「困った時に俯いて黙るのって、冬実ちゃんの癖?」


まるで嘲るようにクスリと笑われて、いつの間にか俯かせていた顔を上げられなくなってしまう。


「まぁ、いいけどね」


口調は決してきつくないのに、責められているような気がしたけど……。


「みちるはね、兄貴の奥さんだよ」


英二さんはごく普通に、なぜかそんなことを口にした。


まだ心の準備はできていないけど、顔を上げようか。


「さっきの話でなんとなくわかったと思うけど、俺の実家は茶道の家元でね。今度兄貴がめでたく継ぐことになったらしい。と言っても、兄貴が継ぐことは昔から決まっていたんだけどさ」


そんなことで悩んでいる私を余所に、英二さんは淡々と言葉を紡いでいく。


「父親がまだ現役だから兄貴が家元として活動するのはもう少し先だけど、年明けに正式な報告を兼ねた茶会を開くらしくてね。みちるは、それに出るように言いに来たんだよ」


その声からは、次第に温度が感じられなくなっていった。

< 157 / 419 >

この作品をシェア

pagetop