狡猾な王子様
「そんなもん、俺らがいくら考えてもわかるわけねぇだろ」


程なくしてため息混じりの言葉が吐かれ、静かだった縁側の空気が揺れた。


「俺もお前も恵まれた円満な家庭環境で育って来て、大した苦労もしてねぇんだ。そもそも、そういう奴の気持ちはその本人にしかわからねぇだろ」


「……そうだよね」


自分が出した答えとほとんど同じ言葉に妙に納得して、自然と小さく頷いてしまう。


「でも、まぁ……」


その反面、胸の奥で燻っているやり場のない気持ちを持て余していると、秋ちゃんが庭に視線を遣った。


「これからどうするのかは、そいつ自身と、そいつの周りにいる奴ら次第だと思うけど」


「え?」


「今までになにがあったのかとか、そいつの家族がどう思ってるのかとかはともかく、本人にちゃんと向き合う気持ちがあるなら、ちょっとは変わって来ることもあるだろ。……たぶんな」


秋ちゃんは胡坐を掻いた足に左肘を乗せ、頬杖を付くようにして再び私を真っ直ぐ見つめた。

< 168 / 419 >

この作品をシェア

pagetop