狡猾な王子様
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ようやく着いた木漏れ日亭の窓からは、明かりが点いていることが見て取れた。
二階は住居スペースになっていると聞いたことがあるけど、電気が点いているのは一階だけみたいだから、英二さんはまだお店にいるのだろう。
ここに来る途中に二十一時半を回り、同時に木漏れ日亭の閉店時刻も過ぎてしまっていた。
営業時間が多少延びることもあるとは思うけど、駐車場に停めてあるのは英二さんのメタリックブラックのワゴン車と私の車だけで、店内にお客さんが残っている様子はない。
それはそれで躊躇いそうになったけど、わざわざこんな時間に来て彼に会わずに帰宅するのはもっと躊躇う。
そんな気持ちに背中を押されるようにして車から降りた私は、辿り着いたドアの前でタッパーを胸元で抱き締めるように持ち直し、ゆっくりと深呼吸をした。
「……よし」
それから意を決する為に小さく呟いたあと、緊張で震えそうになる手に力を入れてドアをコンコンとノックした。