狡猾な王子様
不意に頭の中を駆け巡り始めたのは、よからぬ想像。


昼間に英二さんが傷付いているように見えたことを鮮明に思い出し、途端に彼が今どうしているのかが気になった。


ただの思い過ごしなら、あとでなんとでもなるだろう。


だけど……。


もし、英二さんになにかあったら、取り返しの付かないことになるかもしれない。


人の好い工場長が鬱病になってしまったと聞いた時、私は命があってよかったと思った。


大袈裟かもしれないけど、彼の家族の気持ちを思えばそう考えずにはいられなかったのだ。


だから……。


「英二さん?……英二さん、いらっしゃいませんか?」


考えながらも店内の奥へと進んでいた足は、自然とその先にあるドアを目指していた。


いつか英二さんが休憩室を兼ねたスペースだと言っていたことを思い出し、深く考えるよりも先にドアノブを回してしまったけど……。


「……っ!」


その直後に目の当たりにした光景に、言葉が出なくなるくらいの大きな衝撃を受けた。

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