狡猾な王子様
車を駐車場に停めてから降りると、キンと冷えた空気に思わず首を竦めた。


今日は昼を過ぎても気温が上がることはなく、むしろどんよりと曇っているせいで午前中よりも寒さが増しているんじゃないかと思う。


外に出てからたったの数秒で耳が冷たくなってしまい、顔がピリピリと刺激されているのを感じながらトランクから段ボールを取り出した。


木漏れ日亭のランチタイムはとっくに終わっていて、駐車場には英二さんと私の車しかない。


だけど、もしかしたらまた佐武さんが店内にいるんじゃないかと考えて、なかなか一歩が踏み出せなかった。


足が竦むように震えているのはそのせいなのか、それともただの寒さのせいなのか……。


その答えをはっきりと自覚してしまうとここから動けなくなるような気がして、そっと深呼吸をしたあとでようやく足を踏み出した。


真冬の空気の中を歩いていると、体温がどんどん奪われていく。


冷たくなっていく体が不安に包まれ、今日も笑顔を見せられない予感がした。

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