狡猾な王子様
英二さんが淹れてくれたホットショコラは、お世辞抜きで美味しいと思う。


「あの……」


だけど、ひとつだけ感じたことを伝えようと控えめに口を開けば、彼はフワリと破顔した。


「うん?なんでもいいから、正直に教えて貰えると嬉しい」


「じゃあ……。私はもう少し苦くてもいいかな、って。マシュマロがすごく甘いので、甘さを控えても大丈夫な気がします」


「そっか。……うん、ありがとう」


私に笑みを向けた英二さんは、頷きながら「やっぱり」と独り言のように零した。


「これって、新作メニューですか?」


「鋭いね。新作っていうか、年が明けてから期間限定メニューで出そうかと思ってるんだ」


「これはその試作品」と付け足した英二さんが、笑顔のまま申し訳なさそうに眉を寄せた。


「ごめんね、試作品の味見なんてさせて」


「いえ、全然!むしろ、お店に出る前に飲めるなんてラッキーです」


笑顔で返すと、英二さんは瞳を柔らかく細めてミルクパンを手に取った。

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