狡猾な王子様
「冬実ちゃん、少し時間ある?」


「あ、はい。少しくらいなら……」


「じゃあ、もう一杯だけ味見してくれないかな?」


英二さんはミルクパンに計量した牛乳を注ぐと、私の答えを待つことなくそれを火にかけた。


その一連の動作はまるで私が頷くことを知っていると言わんばかりで、目が合った彼に微笑まれたことにたじろいでしまう。


それでも頼って貰えることが嬉しくて、くすぐったいような気持ちになりながら笑った。


「私でよければ……」


「助かるよ、ありがとう」


言い終わる前にチョコレートを刻み始めていた英二さんは、やっぱり私の返事を見透かしていたのだろう。


「すぐにできるから、その残りは飲まないで待ってて。口直しに水を出すよ」


程なくしてそれをミルクパンの中に入れた彼に、水を注いだグラスを差し出された。


「ありがとうございます」


「それは俺の台詞だから」


クスクスと笑った英二さんの表情が眩しくて、胸の奥がキュンキュンと鳴いていた。

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