狡猾な王子様
呆れた視線を寄越している秋ちゃんを見ながら、口をパクパクと動かすことしかできない。


なんで振られたことがバレてるの!?


図星を突かれて拍動が大きくなり、訊きたいはずの疑問は恐くて口には出せない。


たしかに、英二さんには振られてしまったけど、秋ちゃんにそんな話をしたことがあっただろうか。


思い当たらないけど、私の知らない間に私の気持ちを知っていた家族が五人もいたことを思い出し、途端に不安に包まれた。


「そ、そんなの、別に今はいいでしょ!」


精一杯の虚勢で言い返した私は、秋ちゃんから離れるようにスタスタと歩く。


だけど、いくら私が歩くスピードを上げたって、私よりもがっしりとした体格の秋ちゃんを引き離せるはずがない。


それを思い知らされるまでに数秒も要せず、あっさりと追いつかれてしまった。


「あのな、お前はわかりやすいんだから、嫌でも気づくんだよ」


秋ちゃんは一応気を遣ってくれているらしく、頭をポリポリと掻きながら声を和らげた。

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