狡猾な王子様
二件分の配達を順調に済ませ、最後に残った木漏れ日亭に着いた時には空に雲が増えていた。


どんよりとまではいかないけど、濁ったような色をした雲が雨を連れてくる予感がする。


それでもこの配達さえ終えれば車で帰宅するだけだし、ある意味運がよかったのかもしれない。


「こんにちはー!」


そんなことを考えながらドアを開けると、年配の女性ふたりがちょうどドアの前にあるレジで会計をしているところで、私は慌てて頭をペコリと下げた。


「あぁ、冬実ちゃん。こんにちは」


英二さんはいつものように微笑んでカウンターの方に目配せをすると、ふたりの女性客に手のひらほどの小さなラッピングバッグを渡した。


「メリークリスマス」


「あらぁ、ありがとう」


「英二くんからプレゼントを貰えるなんて嬉しいわねぇ」


嬉しそうな女性たちは、恐らく私のお母さんと同年代くらいだと思う。


“ときめいてます”と言わんばかりに喜ぶふたりを横目に、カウンターに段ボールを置いた。

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