狡猾な王子様
「この間はありがとう。冬実ちゃんのお陰で、なんとか出せそうだよ」


段ボールの中身を確認しようとした英二さんが、不意に優しい笑みでそんなことを口にした。


「よかったです」


すぐに笑顔を返したけど、心が弾むような言葉を与えられた単純な私の胸は、先ほどのときめきと相俟ってドキドキと高鳴っている。


きっとまた切なくなってしまうのに、感じる喜びを素直に受け取る私はやっぱりバカなんだと思う。


「もしよかったら、今日もまた味見してくれないかな?」


それでも、こうしてまた優しく微笑まれてしまったら胸の奥がキュンキュンと締めつけられて、英二さんのお願いにすぐにでも頷きたくなってしまうのだ。


「私でいいんですか?」


「うん。お願いできる?」


「えっと、私でよければ……」


「ありがとう」


控えめに首を縦に振った私に破顔した英二さんは、段ボールから出していったトマトを丁寧に冷蔵庫に片付けたあと、一昨日と同じように手際よくホットショコラを作った。

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