狡猾な王子様
数分もしないうちに目の前に置かれた白いティーカップの中には、一昨日よりも減った小さなマシュマロが浮かんでいて、チョコレートの香りに混じってシナモンの香りがほのかに漂っていた。


「シナモンは入ってませんでしたよね?」


「うん。あれから何回か試作したんだけど、このレシピでいこうかと思って。シナモンが苦手なお客さんには抜いて出す予定だし、冬実ちゃんの感想次第で決めるよ」


「え……」


それって、結構責任重大なんじゃ……。


不安が顔に出てしまったらしく、英二さんがクスリと笑った。


「そんな顔しなくて大丈夫だよ。俺の中ではほぼ決まってるから。ただ、女の子の意見が欲しいだけなんだ」


「だから素直な感想を教えてね」と優しく付け足した英二さんは、柔らかい笑顔のままカップに手のひらを向けた。


「どうぞ。あ、シナモンは大丈夫?」


「はい。じゃあ、いただきます」


緊張しながら手にしたカップに口をつけ、甘い香りを漂わせるホットショコラをひと口飲んだ。

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