狡猾な王子様
「美味しい!」


ホットショコラが喉を伝った直後、思わずそんな感想が口をついて出た。


「あっ……!えっと、美味しい……です」


すぐに自分の口調に気づいて慌てて言い直すと、英二さんがフワリと微笑んだ。


「素直な感想をありがとう」


美味しさについ敬語を忘れてしまったけど、彼はそんなことは気にしていなかったみたい。


「い、いえ……。すみません……」


嬉しそうな表情に落ち着きつつあった拍動がまた大きくなって、謝罪を零したあとでドキドキと騒ぐ心臓を抑えるようにホットショコラをもうひと口飲んだ。


すると、瞳をゆるりと緩めた英二さんが、私を真っ直ぐ見つめた。


瞳が捕らわれた私は、笑顔なのにいつもの優しいものとはどこか違う彼の表情に胸の奥をグッと掴まれ、息が止まってしまいそうになる。


「思わず敬語じゃなくなるくらいだったみたいだし、これで出すことにするよ」


そのまま口角を僅かに上げた表情はとても色っぽくて、途端に頬がカッと熱くなった。

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