狡猾な王子様
程なくして戻ってきた英二さんは、右手に小さなペーパーバッグを持っていた。


「はい」


私でも知っているブランドのロゴと名前が入っているそれを差し出された時、思わず目を見開いてしまった。


「え?……私に、ですか?」


「もちろん。ほら、この間お礼するって約束だったでしょ?大した物じゃないし、気に入って貰えないかもしれないけど」


少しだけ不安そうにしながら微笑んだ英二さんを見上げていた私は、首を小さく横に振った。


「こんな高価な物、受け取れません……。私はいつものように飲み物を頂いただけですし、お礼って言うなら私の方がしないと……」


彼の気持ちはとても嬉しいし、好意を素直に受け取るべきなのかもしれないけど、差し出されている物はお礼というレベルじゃない。


ブランドに詳しくなくても、このロゴのついた物がなかなか高価だというのはわかる。


だから、味見をしたくらいでこんなことをして貰うなんてとても申し訳なく思えて、受け取る気にはなれなかった。

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