狡猾な王子様
「そんなこと言わないで。これは冬実ちゃんのために選んだ物だから」


「……っ!」


優しい微笑みを向けられて、心臓が大きく跳ね上がった。


甘い笑顔で言われた言葉に胸の奥がキュンキュンと鳴き始め、そんな胸の内を隠すように俯いた。


大好きな人が、自分のためになにかを選んでくれた。


その事実が泣きたくなるほど嬉しくて、実らないとわかっている恋でもこんなにも幸せな気持ちにさせられるのかと驚いた。


英二さんにとっては深い意味なんてないのはわかっているし、もちろんプレゼントというわけでもない。


あくまで、これは“ただのお礼”なのだから。


それでも、私にはこの状況を嬉しく思わないなんてやっぱり無理で、申し訳ない気持ちも受け取れないという思いもたしかにあるのに、さっきみたいに首を横に振ることができない。


意志薄弱な自分自身に半ば呆れながらも、心臓は相変わらず私の意思なんて関係なくドキドキと騒いだままで、頬は触らなくてもわかるほど熱を帯びていた。

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