狡猾な王子様
「そんなに大した物じゃないからさ」


再び英二さんが口を開いたのをきっかけに、できる限り平静を装ってゆっくりと顔を上げた。


「でも……高価なブランドですし……」


ペーパーバッグにチラリと視線を遣れば、彼も同じように視線を落としてからフッと笑みを零した。


「お礼っていうのもあるけど、いつも頑張ってる冬実ちゃんにご褒美っていうか、クリスマスプレゼントも兼ねたつもりなんだ」


諭すように言われた言葉に、ますます嬉しくなってしまった。


わかってる……。ちゃんと、わかってる……。


英二さんは、こういうひと。


いつも、みんなに優しくて……。


決して誰の想いにも応えるつもりはないのに、その優しさで期待させるずるいひと。


彼自身もそれをわかっているのかもしれないと感じて、この優しさも狡猾なものに見えてしまいそうになる。


だけど……。


与えられるそれがいずれ涙に繋がるかもしれないと思いながらも、英二さんの気持ちが嬉しくて仕方がなかった。

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