狡猾な王子様
「ふうちゃん、ちょっとこっち来て」


「え?」


不意に私の手を引いた南ちゃんは、部屋の隅にある全身鏡の前に行った。


「はい、ここに立って」


「なに?どうしたの?」


「いいから、ほら」


わけのわからないままの私は、先ほど謝罪を零した雰囲気に似つかわしくない明るい声音の南ちゃんに対して怪訝に思いながらも、彼女に言われるがまま鏡の前に立った。


私の後ろに立った南ちゃんは、少しだけ背伸びをして私の背中をポンッと叩いた。


「ふうちゃん、痩せたよね」


鏡越しに笑いかけてくれた彼女に、戸惑いながら苦笑いを返す。


「もともと太ってたから……。まだ標準より上だし」


「それでも、痩せたことには変わりない。毎日頑張って歩いて、食事もちょっと制限したりして、そんな風にダイエットを始めてから結構経つじゃない。年末年始だってリバウンドしなかったんでしょ?」


「それは、まぁ……。でも、最近は全然ダメだし」


ニッコリと微笑んだ南ちゃんに、呟くように言った。

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