狡猾な王子様
「あの、中に入られないんですか?」


ごく自然と訊いたあとで、ハッとした。


英二さんは勘当同然で実家を出たと言っていたのだから、祖母であるこの女性との関係に支障を来していないとは限らない。


むしろ、彼との間になにかがあるから、この人は立ち尽くすようにお店を見ていたのではないだろうか。


「今日は見にきただけですから。私はこれで失礼します」


その予想を肯定するかのように淡々と話した英二さんのおばあさんは、もう一度頭を下げたけど……。


「あのっ……!でもそれって、木漏れ日亭のホームページと雑誌の切り抜きですよね⁉︎」


ほとんど勢いだけで先ほど辿り着いた答えを口にして、英二さんのおばあさんが手にしたままの二枚の紙を見た。


それは間違いなく、木漏れ日亭のホームページに掲載されているお店の詳細と、一年ほど前に木漏れ日亭が掲載された時の雑誌の切り抜き。


ホームページは何度か見たことがあるし、雑誌は私も密かに切り抜いていたから、それらには見覚えがあったのだ。

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