狡猾な王子様
割れたガラスの原型はグラスだったようで、床にはそうだとわかる形の物が横たわっている。
中に入っていたのは水だったのか、ガラスの破片辺りには透明の液体が零れ、カウンターに置いてあるノートとシャーペンが僅かに濡れていた。
開かれたままのノートに記されているのがレシピだとわかったのは、びっしりと書き込まれた文章と一緒に色鉛筆で描かれたイラストが添えられていたから。
そういえば、つい先日レシピを纏め直していると言っていたから、その作業中だったのだろうか。
「あ、濡れてるか……」
いつもとは違う雰囲気のせいで口を開けなくて、ノートが濡れていることを伝えられずにいると、程なくして立ち上がった英二さんが苦笑した。
「水なんて飲みながらやるんじゃなかったかな」
自嘲気味な微笑を向けられて、戸惑いながらもなんとか口を開く。
「……私もたまに零しちゃいますよ。うっかり手が当たっちゃったりして」
咄嗟にそう言って苦笑した私に、彼は「俺も」と眉間の皺を深くした。
中に入っていたのは水だったのか、ガラスの破片辺りには透明の液体が零れ、カウンターに置いてあるノートとシャーペンが僅かに濡れていた。
開かれたままのノートに記されているのがレシピだとわかったのは、びっしりと書き込まれた文章と一緒に色鉛筆で描かれたイラストが添えられていたから。
そういえば、つい先日レシピを纏め直していると言っていたから、その作業中だったのだろうか。
「あ、濡れてるか……」
いつもとは違う雰囲気のせいで口を開けなくて、ノートが濡れていることを伝えられずにいると、程なくして立ち上がった英二さんが苦笑した。
「水なんて飲みながらやるんじゃなかったかな」
自嘲気味な微笑を向けられて、戸惑いながらもなんとか口を開く。
「……私もたまに零しちゃいますよ。うっかり手が当たっちゃったりして」
咄嗟にそう言って苦笑した私に、彼は「俺も」と眉間の皺を深くした。