狡猾な王子様
英二さんは、その心になにを抱えているのだろう。


干渉する資格なんてないのはよくわかっているのに、悲しげな瞳を見つめているとそんなことを考えてしまって……。


瞳の奥に隠されていることを少しでも知りたくなって、たしかに傷ついた顔をしていた彼の心を癒やしたいと思ってしまった。


私に癒やせるはずはないし、この気持ちがどれだけおこがましいことなのかと考えると、今にも嘲笑が漏れそうになる。


だけど、それを理解していても、胸に秘めることができなくなりそうなほどに大きくなった恋情が、私に浅はかな言葉を言わせようとする。


私がなにを言っても、きっと気障りなだけ。


いつかもそう思ったことを思い出し、もしこのまま口を開けば、またあの時のように傷つくことはわかっていた。


それなのに……。


「……みちるさんがいらっしゃってたんですね」


どうしても気持ちを抑えられなかった私は、はっきりとした口調で頭に浮かんだばかりの言葉を紡ぎ、視線を下げたままの英二さんを見つめた。

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