狡猾な王子様
ゆっくりと私に向けられた、綺麗な双眸。


そこから英二さんの気持ちは読み取れないけど、彼の眉は次第に寄せられていき、程なくしてその表情が小さく歪んだ。


「どうして?」


微苦笑とともに零された質問は、“なぜそれを知っているのか”ということを指しているのではなく、たぶん“なぜそんなことを訊くのか”と言いたかったのだと思う。


以前、ほんの少しだけ語られた英二さんの事情を察するのなら、この話に触れない方がいいのはわかる。


それなのにわざわざ尋ねた私に、彼は僅かに不快感を覗かせた。


同時に空気がピリリとして、触れるな、と言われているような気がしたけど……。


「さっき、みちるさんの車とすれ違ったんです。あの……」


敢えて話を続け、さらに踏み込もうとしていた。


恐らくそれに気づいたであろう英二さんの顔色が変わり、笑顔が繕われる。


「冬実ちゃん、今日はもう──」


「みちるさんとなにかあったんですよね?」


だけど、私は意を決して彼の言葉を遮った。

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